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  • 執筆者の写真Omura Masayuki

木霊と兎男たち

仕事場では基本的にずっと音楽流しっぱなしですが、このところ、一周回って古いものをよく聴いている。特にポストパンク〜ニューウェイヴあたりの80年代モノが面白くてたまらん。昔さんざん聴き倒したはずのバンドであっても、今の耳で聴くと新しい発見があって、以前はそうでもなかった曲が逆にツボったり、興味深い。いわんやアルバム数枚しか聴いていなかったバンド、当時聴き逃していたバンドにおいてをや。

おそらくこの先祖返り的な志向は、2016年初頭の★の日に端を発していて、それからの1年間はボウイしか聴けなかったし、聴く気にならなかった。


とまあこの話は置いといて、今回はとにかくバニーメンであります。


Echo & The Bunnymenという妙ちきりんなバンド名を冠したポストパンク/ニューウェイヴなバンドと出会ったのは高校生の頃。当時U2が『War』でブレイクした時期で、友だちに「U2が気に入ったんならこれ聴いてん」とすすめられて、『Porcupine』を聴いた。

その時はたぶんそれなりに気に入ったんじゃなかろうかと思うけど、そこまでの衝撃はなかった。ほんとうの出会いは、それからしばらく経って、ラジオでOAされたライヴを聴いたとき。今まで感じたことのない種類の冷気と熱気を同時に発する音楽で、まさに一撃必殺でした。まあね、ビートルズとツェッペリンとヒットチャートしか知らんような高校生のガキんちょが、やっとボウイと出会って「イギリス」というものを意識しはじめた頃やったからね、そら何もかも新しかったのはあたりまえ。


それからどうやって集めたのか忘れたけど(とりあえずレンタル屋か?田舎のレンタル屋にこんなマイナーなバンドのアルバムが揃っとったのか?)、全アルバム一気に聴きまくった。

当時は3枚目『Porcupine』とか4枚目『Ocean Rain』がお気に入りやったけど、最近聴いたところでは、大名曲「Over the Wall」入りというのもありますが、どうも2枚目『Heaven Up Here』が最高傑作なんじゃないかと。たしかに3、4枚目も名盤には違いないけど、そこで聴くことのできるキャッチーなPOPさはまるでなく、このアルバムでは緊張感を伴う空間的な広がりや深さが突出しているように思う。冷たさで火傷してしまいそうな、バニーメン特有のヒリヒリした感触の音がグイグイ押してきます。エッジの効いた切り裂くようなギター、深く重く強力なベース、地を這うバスと対照的に跳ねまくるスネア、深い淵を漂っていたかと思うと、一気に湧き上がって爆発するヴォーカル。メロディ、曲構成、アレンジ、演奏、音響、すべてが素晴らしい(歌詞はわからんけど)。


ジャケ写が美しい当時の日本盤LP。スペースを圧迫するけどアナログ盤はやっぱり手放せない。家の者たちにはとても迷惑がられてますが。

最後に。「ネオサイケ」と言われて昔からドアーズの影響が取り沙汰されていましたが、当時も今もやっぱりよくわからん。そもそも音楽における「サイケ」の定義もわからんし、ドアーズにそれほどサイケを感じんし。ドアーズの音楽からあふれ出る酒や体臭や土のにおい、太陽のにおいも、バニーメンからは一切感じない。個人的にですが。

共通点を上げるならば、影を伴い起伏激しめの二人のヴォーカルスタイルか。


超シンプルなタイポグラフィーのみ、書体もUniversと、極限まで削ぎ落としたデザインは、写真と相まって音楽性の静謐サイドをよくあらわしてますね。

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